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X染色体連鎖性低リン血症性くる病

最終更新日:
2020年02月28日
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2020/02/28
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概要

X染色体連鎖性低リン血症性くる病とは、X染色体(性別を決める染色体のひとつ)に存在している遺伝子の変異が原因となって血液中のリンが不足し、骨の石灰化(骨を強くする作用)が正常に行われなくなる病気です。骨が脆弱(ぜいじゃく)化することで体重の負担がかかりやすい下肢の骨の変形や低身長、また些細な刺激で骨折するなどの症状が引き起こされます。

この病気で血液中のリンが不足するのは、一旦尿中に排出されたリンを再吸収する腎臓の尿細管機能に異常が生じることが原因です。1995年に、尿細管機能の異常はX染色体上の“PHEX”と呼ばれる遺伝子によって引き起こされることが分かりました。また2002年にはこの遺伝子変異によって、血液中のリン濃度を調節するホルモンであるFGF23の作用が過剰となることで尿中のリン排泄が多くなり、かつ小腸からのカルシウムの吸収を促進する活性型ビタミンDの作用が低下することで、血液中のリン濃度が持続して低下することがわかりました。

また、この遺伝子は優性遺伝することが分かっており、両親のいずれかがこの病気を発症している場合に遺伝する可能性がある病気です。

原因

X染色体連鎖性低リン血症性くる病は、性染色体のひとつであるX染色体上に“PHEX”と呼ばれる特殊な遺伝子を有することが原因で発症する病気です。この遺伝子は優性遺伝形式で子に受け継がれるため、“家族性低リン血症性くる病”のひとつでもあります。

PHEX遺伝子が存在すると腎臓の尿細管の機能が低下し、一旦尿中に排出されたリンが血中で再吸収されなくなるため、必要なリンまで尿と共に排出されるようになります。また、活性型ビタミンDの産生が抑制されることで、腸管からのカルシウムとリンの吸収も低下します。その結果、血液中のリンが不足し、骨の石灰化に異常が生じてくる病気を引き起こすのです。

X染色体連鎖性低リン血症性くる病におけるPHEX遺伝子の異常は“FGF23”と呼ばれるホルモンの産生を促す作用があり、この“FGF23”の作用過剰が尿細管でのリンの再吸収とビタミンDの活性化を抑制し、くる病を引き起こすことが分かっています。現在では、古くから問題となっていた原因不明の低リン血症によって発症するくる病の多くは、このFGF23の作用過剰が原因で引き起こされるX染色体連鎖性低リン血症性くる病を主としたFGF23関連低リン血症であると考えられています。

症状

X染色体連鎖性低リン血症性くる病は、血液中のリンが不足することによってハイドロキシアパタイト形成による骨の石灰化が低下して骨が脆弱化する病気です。特に体重の負担がかかる下肢の骨が影響を受けやすく、O脚・X脚状の変形、低身長などの症状が引き起こされます。また、偽骨折(ひびの様な骨折)による全身の疼痛や骨折も起こりやすくなります。

この病気は生まれつきの病気であるため、多くは立位や歩行の開始後から症状が現れ始め、歩行開始が遅れやすいのも特徴のひとつです。さらに、成人になると股関節や膝関節の関節部分やアキレス腱付着部位に、骨の異常な骨化による骨棘(こつきょく)や背骨の異常な骨化による脊柱靱帯骨化症が起きることで正常な関節運動ができなくなったり、痛みが生じたりすることもあります。

また、歯の形成にも異常が生じやすく、虫歯になりやすいとされています。

そのほかに、この病気では尿に過剰なリンが含まれるため、特に従来の活性型ビタミンDやリン製剤での治療が過剰となると尿路結石や腎臓の石灰化、多尿などが起こりやすくなります。

検査

X染色体連鎖性低リン血症性くる病は、数ある“くる病”のうちのひとつです。このため、くる病が疑われる症状が見られるときは、脚のレントゲン検査で骨の変形を確認し、血液検査で血液中のカルシウムやリン、活性型ビタミンD濃度、腎機能などを調べる検査が行われます。

そして、これらの検査結果から慢性の低リン血症による低リン血症性くる病であることが分かった場合、血液中のFGF23濃度の測定を行います。FGF23が低リン血症であるにもかかわらず30 pg/mL以上であればFGF23関連低リン血症と診断されますが、そのうえで家族や近しい親族に同じ病気の人がいないかなどを考慮して、X染色体連鎖性低リン血症性くる病と診断することが可能です。厳密な確定診断はPHEX遺伝子解析により行われます。

FGF23の測定は2019年より保険適用となりましたが、PHEXの遺伝子検査は2020年2月現在では保険適用になっていません。そのため、遺伝子検査を行う場合には自費負担となります。しかし、仮に確定診断を受けたとしても他のFGF23関連低リン血症性くる病と同じ治療を行うことになるため、あえて検査をしないケースもあります。

治療

X染色体連鎖性低リン血症性くる病は遺伝子の変異による生まれつきの病気です。このため、遺伝子の変異によって生じるFGF23の過剰産生を根本的に治すことはできません。

これまでのこの病気の治療は、不足した活性型ビタミンDとリンを補う治療が主体でした。しかし、リン製剤は内服後1~2時間しか血中リン濃度を増加させることができず、1日4~6回に分けて内服する必要があります。また活性型ビタミンDとリン製剤の投与により、FGF23がさらに過剰に分泌されて血中リン濃度を低下させようとすることから、小児のO脚・X脚や低身長、小児・成人の偽骨折や骨折の予防、治癒への効果は不完全なものでした。最近、X染色体連鎖性低リン血症性くる病の直接の病因であるFGF23の過剰な作用を標的とした坑FGF23抗体医薬が日本でも使用できるようになり、より上記の症状を根本的に改善できるようになってきています。

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